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「え、なに? 『男飯のススメ』って、……レシピ本?」
「いつもゆずに作らせるの悪いから。ハードルの低い料理あるかなと思って、見てたんだよ」
「なんでいきなり?」
尋ねながらレシピ本を手に取り、ぱらぱらとめくっていたら、ふと檸檬の気配が近づいたので譲はどきりとする。
「一周年記念に」
「……何が?」
「僕がゆずを食べてから、もうすぐ一年」
「はぁ?」
何を言い出すのかと思って聞いていたら、檸檬は至極真面目な顔をして囁いた。
「恥ずかしいことを言わんでよ」
「あ、そう? ゆず恥ずかしかった? ごめん」
「恥ずかしいよ」
「ごめんて」
「大体『ゆずを食べた』って何だよ。檸檬さんが、俺を?」
「ある意味」
檸檬は柔らかい笑みを浮かべ、出掛ける用意を始めている。
「一緒に買い出し行こう。で、その本の17ページにあるメニューを作ってみてもいいかな」
「え、ああ……勿論」
「で、夜になったら今度はゆずのことをオフトゥンで食べよう」
「……オフトゥン」
真面目な声でふざけられると、どんなリアクションをして良いものか悩む。一年経ってもよくわからない人だなあ、と心の中で呟いて、譲は17ページにあるレシピの材料をメモすると立ち上がった。
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