11人が本棚に入れています
本棚に追加
その3 チラ裏シチュエーション
檸檬がいつになく熱心に、スマホを凝視して何かの記事を見ている。なんだろうとソファに座って隣から覗き込もうとした譲は、軽く手で遮られた。
「なに、今の何? カクテル? ……飲みに行くのか?」
「人のスマホを覗き込むのはマナー違反だよ、ゆず」
「えー隠し事? 俺がこの前合コン行ったからって、俺を置いて飲みに行く気なのか?」
「そういうんじゃないよ。……でも、僕のすることに興味を持ってくれるのは嬉しいよ」
檸檬は穏やかな笑みを整った顔に浮かべ、譲の頭を軽く抱えた。ふんわりと良い匂いがして、譲はくらりとする。
「檸檬さんのつけてる香水って何」
「つけてないよ。多分柔軟剤じゃないかな? 一緒の匂い、ゆずの服にもついてると思うけど」
「そっかな……この匂い……俺好き」
くんくんと匂いを探る譲の目の前に、先程遮られた記事の画面がすんなりと提示された。檸檬の手が髪を優しく撫でてくれていたが、むくりと起き上がってスマホを受け取る。
「これを見ていたんだ。ゆずも見てみて」
「えー……と、なんだ? バディ……三角関係、リバに、ワンナイトラブ? 上下関係……双子……に、萌えろ?」
「面白そうじゃない?」
「何これ?」
「BL投稿サイトの企画なんだ。ね、ゆず。僕がこれからあみだくじを作ります。止まったところの企画にさ、乗ってみない?」
「ごめ、言ってる意味がわからない」
譲は戸惑った声を上げて、受け取ったスマホの画面をしげしげと眺める。そこには洒落たカクテルの画像と、『カップリングに萌える』という文字がある。この企画に乗るとは一体どういうことなのだろう。
「まあまあ、これをどうぞ」
譲がスマホを見ている間に、檸檬はいつの間にかチラシの裏に6通りのルートが選べるあみだくじを書いていた。もしかしてこのくじの隠された部分に、カップリングを記入したのだろうか。
最初のコメントを投稿しよう!