その3  チラ裏シチュエーション

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その3  チラ裏シチュエーション

 檸檬(れもん)がいつになく熱心に、スマホを凝視して何かの記事を見ている。なんだろうとソファに座って隣から覗き込もうとした(ゆずる)は、軽く手で遮られた。 「なに、今の何? カクテル? ……飲みに行くのか?」 「人のスマホを覗き込むのはマナー違反だよ、ゆず」 「えー隠し事? 俺がこの前合コン行ったからって、俺を置いて飲みに行く気なのか?」 「そういうんじゃないよ。……でも、僕のすることに興味を持ってくれるのは嬉しいよ」  檸檬は穏やかな笑みを整った顔に浮かべ、譲の頭を軽く抱えた。ふんわりと良い匂いがして、譲はくらりとする。 「檸檬さんのつけてる香水って何」 「つけてないよ。多分柔軟剤じゃないかな? 一緒の匂い、ゆずの服にもついてると思うけど」 「そっかな……この匂い……俺好き」  くんくんと匂いを探る譲の目の前に、先程遮られた記事の画面がすんなりと提示された。檸檬の手が髪を優しく撫でてくれていたが、むくりと起き上がってスマホを受け取る。 「これを見ていたんだ。ゆずも見てみて」 「えー……と、なんだ? バディ……三角関係、リバに、ワンナイトラブ? 上下関係……双子……に、萌えろ?」 「面白そうじゃない?」 「何これ?」 「BL投稿サイトの企画なんだ。ね、ゆず。僕がこれからあみだくじを作ります。止まったところの企画にさ、乗ってみない?」 「ごめ、言ってる意味がわからない」  譲は戸惑った声を上げて、受け取ったスマホの画面をしげしげと眺める。そこには洒落たカクテルの画像と、『カップリングに萌える』という文字がある。この企画に乗るとは一体どういうことなのだろう。 「まあまあ、これをどうぞ」  譲がスマホを見ている間に、檸檬はいつの間にかチラシの裏に6通りのルートが選べるあみだくじを書いていた。もしかしてこのくじの隠された部分に、カップリングを記入したのだろうか。
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