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「えっ? つまり何? 檸檬さんは……例えば、俺がこのあみだで引いたカップリングとやらを、試そうとしてるのか」
「正解ー。ささ、どれでも好きなルートを選んで」
「ちょっと待ってよ! 俺BLとか読まないからわからないけど、三角関係とか引いたらどうなるわけ? 誰と三角関係になるんだ?」
「三角関係……か、そうだなあ。誰か連れてくる? ナーやんとか」
「なんでナーやんが出てくるんだよ! 普通にやだよ! あと何、ワンナイトラブって。それっきりかよ? 檸檬さんと一晩だけの関係を持ったら、俺は捨てられるのか?」
「僕が……ゆずを捨てるわけないじゃない」
面白そうに譲を見つめる視線は優しい。檸檬の思いつきのお遊びに本気になっている相手に、少し驚いているようにも見えた。ちなみにナーやんというのは、二人共通の友人だ。
「もしゆずが嫌なカップリングだったら、やめてもいいから。とりあえず引いてみて?」
優しく言われて、譲はしぶしぶ左端のルートをペンで辿り始める。紆余曲折ぐるぐると辿っていったが、折れて見えないゴールの手前で止まった。
「はい、ゆずの選んだのはー……リバ!」
「リバとは……?」
「普段ゆずは僕のことを抱っこするでしょう。それの逆だよ。……どうする?」
「――は」
譲の手がゴールのところから後ずさる。それから線を一本足して、ルート逃れをするという暴挙に出たが、特にクレームはつけられなかった。
「おやおや? 次にゆずが選んだのはー、双子! ――双子か。どうしよう僕たちは双子ではないね」
「このあみだ駄目じゃん!」
「んじゃも一本線を引こうか。次は僕の番ねぇ……バディとか楽しそうだけどー」
檸檬の体が密着してきて、譲から奪ったペンで線を引くと、すぐに新たなるゴールに辿り着く。そこにあったのは、上下関係だった。
「これでいい? どうする?」
「上下関係て……どっちが上? 檸檬さんが上?」
「……あれ、リバに戻る?」
「えっ、ちが」
「もうなんでもいいやー。ゆず、オフトゥン行こ。オフトゥン。……ゆずのこと食べちゃお」
結局なんの意味も為さなかったあみだくじは、テーブルからはらりと落ちた。けれど譲の頭の中にはいろんなカップリングが飛び交って、その夜は変なふうに燃えた、いや萌えた、のかも知れない。
リバ……リバとは……。
いつかそんなシチュエーションも来るのだろうか。今の時点では何とも言えなかった。
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