その3  チラ裏シチュエーション

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「えっ? つまり何? 檸檬さんは……例えば、俺がこのあみだで引いたカップリングとやらを、試そうとしてるのか」 「正解ー。ささ、どれでも好きなルートを選んで」 「ちょっと待ってよ! 俺BLとか読まないからわからないけど、三角関係とか引いたらどうなるわけ? 誰と三角関係になるんだ?」 「三角関係……か、そうだなあ。誰か連れてくる? ナーやんとか」 「なんでナーやんが出てくるんだよ! 普通にやだよ! あと何、ワンナイトラブって。それっきりかよ? 檸檬さんと一晩だけの関係を持ったら、俺は捨てられるのか?」 「僕が……ゆずを捨てるわけないじゃない」  面白そうに譲を見つめる視線は優しい。檸檬の思いつきのお遊びに本気になっている相手に、少し驚いているようにも見えた。ちなみにナーやんというのは、二人共通の友人だ。 「もしゆずが嫌なカップリングだったら、やめてもいいから。とりあえず引いてみて?」  優しく言われて、譲はしぶしぶ左端のルートをペンで辿り始める。紆余曲折ぐるぐると辿っていったが、折れて見えないゴールの手前で止まった。 「はい、ゆずの選んだのはー……リバ!」 「リバとは……?」 「普段ゆずは僕のことを抱っこするでしょう。それの逆だよ。……どうする?」 「――は」  譲の手がゴールのところから後ずさる。それから線を一本足して、ルート逃れをするという暴挙に出たが、特にクレームはつけられなかった。 「おやおや? 次にゆずが選んだのはー、双子! ――双子か。どうしよう僕たちは双子ではないね」 「このあみだ駄目じゃん!」 「んじゃも一本線を引こうか。次は僕の番ねぇ……バディとか楽しそうだけどー」  檸檬の体が密着してきて、譲から奪ったペンで線を引くと、すぐに新たなるゴールに辿り着く。そこにあったのは、上下関係だった。 「これでいい? どうする?」 「上下関係て……どっちが上? 檸檬さんが上?」 「……あれ、リバに戻る?」 「えっ、ちが」 「もうなんでもいいやー。ゆず、オフトゥン行こ。オフトゥン。……ゆずのこと食べちゃお」  結局なんの意味も為さなかったあみだくじは、テーブルからはらりと落ちた。けれど譲の頭の中にはいろんなカップリングが飛び交って、その夜は変なふうに燃えた、いや萌えた、のかも知れない。  リバ……リバとは……。  いつかそんなシチュエーションも来るのだろうか。今の時点では何とも言えなかった。
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