Ⅰ コバルトの伝言

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Ⅰ コバルトの伝言

 年齢、二十歳そこそこ。金髪、前下がりのおかっぱのようなショートボブ、若さを武器にしたメイク。ダボダボのピンクのパーカーに、細身のスキニーパンツ。飲んでいるものはたぶん、ファジーネーブル。あ、ついでに備考、きゃらきゃらとした笑顔が眩しすぎて目にイタイ。  ……万一訴訟になったときのために、浮気相手の特徴はよく覚えておいた方がいいと思った。  見てしまった。見なくていいものを見てしまった。  一緒に住んで半年、付き合ってからは早九年。親公認のお付き合い、もはやときめきも薄れかけた彼氏(二十七歳同い年)の、堂々たる浮気の現場を目撃してしまった。しかもあんな、ついこの前まで未成年でしたくらいのわっかい女の子をつかまえて。もうおっさんのくせに。ていうか、金曜の夜午後九時半、こちとら残業でボロボロだというのに!!  おしゃれイタリアンのウインドウ越しに舌打ちをひとつして、私はその足で駅前のレンタカー屋に飛び込む。人の好さそうなおじさん店員に、最高級の笑顔を作って、こう言い放つ。 「明日朝イチ、かっこかわいい車を一台、二日間で」
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