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版画中央の階段には腰掛けた娼婦が描かれている。娼婦は隣で階段の角から転落しかけている我が子にも気づかぬほど己を喪失し耽溺していた。
私は思わずその姿に母を重ねる。
ただし溺れているのはジンではなく男だ。
母は男に夢中になると私を決して見ようとはしないから。
今夜も母は派手な赤いキャミソール姿で鏡に向かい鮮やかな紅をひいている。卓越した化粧は端麗な顔を際立たせ、流行りのピンクグレージュのゆる髪の後れ毛は白い頸を色づかせた。
「何見てんのよ」
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