僕らはウソをつく

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ー 私はウソをついている。 ー僕はウソをついている。 「おはようユキ!」 「あっ、おはようルミちゃん。」 「髪型違うじゃん、可愛いね。」 「あ、そうかな……ありがとう。あの、ユキちゃんも、か、可愛いよ。」 「あは、ありがとう。」 「ん、えへ。」 朝の挨拶、のんびりと。 キャッキャと。 私は、ウソをついている。 「おはよーう。」 「朝から元気なー。」 「いつも元気いっぱい!分けてやろーか?」 「いらねぇよー!」 朝の恒例、仲間内でワイワイと。 ほんのり賑やかに。 僕はウソをついている。 ー キーンコーンカーンコーン…… 「じゃ、ばいばい。」 「あれ、今日一緒に帰んないの?」 「あ、えと……。」 「あは、いいよ。分かった、また明日ね!」 「ん、ごめんね。また、明日。」 放課後、私は私に戻る。 「帰りどーするよ?」 「俺パス、ごめん。」 「マジかー。」 「明日ジュース1本。」 「乗った!」 「んじゃなー。」 「おう、また明日なー。」 放課後、僕は僕に戻る。 『マダー?』 『もーちょっと、待ってて!』 ー ピロン 「はいはーい。」 「あ……おっ、お待たせっ!」 「もー、おっそい!」 「ごめーん……。」 毎晩ゲームするくらいオンラインゲームが好きなんてバレたら、オタクだって言われて面倒だから待ち合わせはゲームの中だけ。 友達と寄り道をしていても面倒なんだ、だから僕らの待ち合わせはいつもゲームの中。 「ねぇ、今日はどこいくっ?」 「んー……そうだなぁ、こないだ言ってた装備作りにでも行くか。」 「マジでっ!?ありがとう!1人じゃ怖くてさぁ……。」 「だろうね。僕もちょっと欲しいモンあってさ、ついでだよ。他は足りてる?」 気弱な彼の声がワクワクと弾む。 薄っぺらな笑顔が張り付いたみたいな元気な声ではなくて、すまなそうに嬉しそうにとクルクル表情が変わる。 僕はここ数日、彼が前回作りたがっていた装備の素材クエストの武器を作りがてら予習をしていた。 今日をすっごく楽しみにしていて、恥ずかしい思いはしたくなくてコッソリ練習してたら基本素材が集まってしまってたんだよね。 ……絶対に内緒だけど。 「あっ、えーっとね……。」 「うん。見といて、飲み物もってくるから。」 「あっ、うん!」 気だるげな彼女の声が聞こえる。 一切の緊張がなくて、言葉を詰まらせることも俯いて話すこともない。 僕は彼女と少しでも長くゲームをしていたくて、ここ数日はメインクエストで集まる素材以外を集めた後は苦手なクエストの練習ばかりしていた。 彼女が苦戦しているクエストで、せめて足でまといにならない程度には成長しておきたくて。 ……絶対に内緒だけど。 「うわーっもう!ボックス足りないよー。」 「なら、必須系は僕がMAXで持ってくから回復強化全詰みでいーよ。」 「わ、わかった!」 「急がなくていーからね。」 「っうん!」 ウソつきな僕らの、ホントの時間。 ウソの世界で過ごす、ホントの時間。 「いっ、いくよっ!」 「おーう。っしゃ!」 ー クエスト・スタート ー 僕らの物語の、始まりのラッパが鳴り響いていた。 それは、数年前の出来事。 「ねぇ、なんか……懐かしいね。」 「何ニヤニヤしてんの、気持ち悪いなぁ。」 「ごめん……えへへっ。」 「ちょっと、僕までニヤケるからやめてってば。」 僕らは、ウソをついている。 あの頃から大好きだったことは、絶対に内緒だから。
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