2人が本棚に入れています
本棚に追加
あたしは結局何がしたかったんだろう。
王子様のあふれんばかりの寵愛も、舌がふやけるほどのご馳走も、今のあたしには何も響かない。城のメイドたちは、言えばなんでもやってくれるが、いつもどこか距離を感じた。偽善者じみた薄っぺらいその笑顔の裏で、あたしのことを悪く言っているのは手に取るようにわかった。
昔みたいに、湯水のように金を遣っても満たされなかった。国中の誰もがうらやむような絢爛豪華な暮らしも、ただただあたしの心を虚しくさせるばかりだった。
ねぇ、姉さん。
あたしがほんとうにほしかったものって、なに。
----------------
“おかあさま、シンデレラはおうじさまとむすばれてしあわせだったのかな?”
――そりゃそうだとも。着るものも食べるものも、何不自由なく暮らせたのだからね。働かなくてもいいし、みんなからは大事に扱われて、このうえない幸せだよ。
“へぇ、いいなぁ。あたちもおうじさまとけっこんしたい!ねぇ、あたしもぷりんせすになれる?”
――あぁ、もちろんだとも。そのための金と時間は惜しまないからね。でもやっぱり大事なのは、積み重ねの努力よりも見てくれや、人に取り入る力だね。今度はそれについてまたお勉強しようか。そうして私に楽をさせて、幸せにさせておくれよ。
最初のコメントを投稿しよう!