悪役醜女はほくそ笑む

10/12
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
まぁいいわ。駒として使えるうちは使って、あとは適当に始末させましょう。 布石とは、相手にそうと悟らせず先を見据えて打つもの。 お義姉さま。マリオネットのお義姉さま。あなたはしょせん、わたしの手のひらで転がる操り人形。その運命を変えることなど造作もないのよ。あたしがこうしているうちに、駆け落ちでもなんでもして自由に暮らすといいわ。あたしはあたしなりの幸せを手に入れるから。ドレスの下に忍ばせた下剤を、そっと隠した。 ------- 舞踏会は予想外に長引き、あたしたちが帰ったのは翌日に差し掛かるころだった。馭者にチップを渡し、馬車から降りる。 屋敷に帰って愕然とした。 その惨状に、膝から崩れ落ちた。 『あの娘さん…本当に残念で……』 舞踏会が行われたその日。街では、空き巣が多発したのだという。それもそのはず、舞踏会の日時は国民全員に知れ渡っていた。招待状が届いていない者もの含め、その日は皆こぞって城に集まっていたから。 被害住宅37564件。死亡者1名。 ――強盗に運悪く鉢合わせし、為すすべなく殺されたのは、家にいた義姉さんただ1人だった。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!