悪役醜女はほくそ笑む

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「おまえは、おまえだけは妃になるのですよ。他の誰を蹴落としてでも、必ず」 自分が成しえなかった夢と希望を子どもに託すなんて、よくある話だ。 子どもはどうあがいても親の玩具でしかないのだ。 王子様はこの国で1番の財産をもつ人気者。つがいになれば自身も、その家族も一生安定した暮らしを保障されることだろう。 それこそが最高の幸せ。最上の親孝行。幼いころからそう教え込まれて、早20年近くの時が経っていた。妃になることは容易ではないけれど、選ばれるための努力は惜しまなかった。 朝は鶏が鳴くより早くに起き、政治などの一般教養について学ぶ。昼からは礼儀作法など。屋敷には一族お抱えの家庭教師が代わる代わるやってきた。 ただ、家事だけはからっきしだった。料理をしようと思えば火加減がわからずボヤ騒ぎ、洗濯掃除にいたってはかえって汚してしまい、2度手間に。 それでも、王族になるのならそんなのは必要ないとお母さまは言ってくださった。だからわたしは自分の得意とするもの、求められるものだけに集中すればいいんだ。
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