3人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
なぜかって?あたしは生まれながらにプリンセス、選ばれた人間だから。
令嬢という肩書もそうだけれど、そう断言できるのはこの優れた容姿にあった。
小柄ながらにふくよかな胸、コルセットで絞められたくびれは見事な曲線美を描く。
小首を傾げて、西洋人形のような瞳で見つめれば、老若男女問わず侍らせることができる。
よく言うでしょ、カワイイは正義って。だから、こうして幸薄そうにしおらしくしていれば、いつかステキな王子様が迎えにきてくれるのよ。
令嬢であるわたしが汗水垂らして自分で働くのは考えられない。そんなの、へそでお紅茶が沸いてしまう。愛もお金も、求めるものじゃない。運んできてもらうものだから。
2時間後。
街中の情報をかき集めたあたしは、ある場所へと赴き馬車の前を横切る。
あの紋章は、この国では名の知れた一族のもの。うまく取り入ることができれば。
――いななきと共に聞こえる罵声。
“急に飛び出るんじゃないよ!危ないじゃない!!”
ヒステリックに捲し立てながら出てきた女はずいぶん痩せぎすで、実年齢より老けてみえた。
しかしそれも、わたしを見るまでの話。
「……アナタ、ずいぶん綺麗ねぇ…。どこのご令嬢?」
すべては計算通り。
最初のコメントを投稿しよう!