悪役醜女はほくそ笑む

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なぜかって?あたしは生まれながらにプリンセス、選ばれた人間だから。 令嬢という肩書もそうだけれど、そう断言できるのはこの優れた容姿にあった。 小柄ながらにふくよかな胸、コルセットで絞められたくびれは見事な曲線美を描く。 小首を傾げて、西洋人形のような瞳で見つめれば、老若男女問わず侍らせることができる。 よく言うでしょ、カワイイは正義って。だから、こうして幸薄そうにしおらしくしていれば、いつかステキな王子様が迎えにきてくれるのよ。 令嬢であるわたしが汗水垂らして自分で働くのは考えられない。そんなの、へそでお紅茶が沸いてしまう。愛もお金も、求めるものじゃない。運んできてもらうものだから。 2時間後。 街中の情報をかき集めたあたしは、ある場所へと赴き馬車の前を横切る。 あの紋章は、この国では名の知れた一族のもの。うまく取り入ることができれば。 ――いななきと共に聞こえる罵声。 “急に飛び出るんじゃないよ!危ないじゃない!!” ヒステリックに捲し立てながら出てきた女はずいぶん痩せぎすで、実年齢より老けてみえた。 しかしそれも、わたしを見るまでの話。 「……アナタ、ずいぶん綺麗ねぇ…。どこのご令嬢?」 すべては計算通り。
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