プロローグ 何かがおかしい

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「終点新宿、新宿。 大急線をご利用くださいまして ありがとうございました。 お忘れ物ないようご注意下さい。」 終点に着き電車を降りる。 多くの人が行き交う日本有数の ターミナル駅なだけあって 人混みをかき分けて歩くだけで 疲れてしまう。 乗り換え改札でICカードをタッチしよう としたら、駅員に声をかけられた。 「あの、お客様。通行手形は お持ちでしょうか?。 確認システムに反応しないんですが・・・。」 通行手形?そんなものは勿論持っていない。 法律が変わったのだろうか。 「きっぷのことですか?」 「ちょっと事務室までお願いします。」 腕をつかまれて連行されていく。 不正乗車をした気分だ。 事務室についた。 「幕府の人民乗車規定により、 電車の乗車時には通行手形の携帯が 必須となっています。」 ん? どういう事だろうか。 さっきの看板の件といい、やはり 何かがおかしい。 「これは観光客の場合も同じです。 もし持っていないのならば 奉行所に通報させていただきます。 ただし、紛失したという場合に限り 審査の後、再発行も可能ですが いかがなさいますか?」 難しそうな話だがこの駅員が言っている事を 簡単に説明するともし通行手形が無いなら 通報するぞと言う事だ。 なぜ通行手形が必要なのかは 分からないがこうなったら仕方がない。 無くしたと嘘をつこう。 「再発行お願いします。」 「ではここに住所と連絡先を。」 嘘も方便だ。 面倒くさいことになるよりは良いだろう。 あとさっき駅員が言っていた奉行所というの は警察のことだろうか。 俺は駅員にさっきから気になっていた ことを尋ねる。 「ちょっといいですか。 幕府は明治時代におこった 戦争で新政府軍によって 消滅していますけど。 今はそんな言い方しませんよ。」 中学生レベルの歴史しか頭に入っていないが 幕府が戦争で消滅したことくらい 俺でも分かる。 でも、俺がそう言った途端、 駅員はくすくすと笑い始めた。 そして、次に駅員の口から告げられたのは 衝撃的な言葉だった。 「外国のお客様なのか社会情勢に 興味がないのかは知りませんが、 日本は将軍様を中心とした幕府国家です。 政府ではありません。幕府です。」 「・・・。」 そんな......。 どうやら本当に超常現象が 起こったみたいだ。 異世界に来ちゃったのかな。 「すいません、今って何年ですか?」 「面白い方ですね。 今日は2019年の4月5日です。」 もしここが異世界だったら 日付や時間が同じ訳がないだろう。 だとしたらパラレルワールド? 多分そうだ。 いや、それ以外に考えれない。 じゃあここは江戸幕府が戦争で 勝利し再び日本を 支配している『並行世界』ということか?。 車にはねられて異世界に転生するなら 分からなくも無いが まさか道路で転んだだけで パラレルワールドにやって 来てしまうなんて。 信じられない。 俺は頬をつねった。 「痛っ。」 頬から脳へ痛みが伝わってくる。 どうやら夢ではないようだ。 「再発行完了しました。」 駅員からカードを受け取る。 通行手形なんて言うから もっとちゃんとしたものだと 思ったが市立図書館の貸し出し券を 彷彿とさせる 薄いカード状のものだった。 「お待たせしてすいませんね。」 いや、さっきまで俺のことを 馬鹿にしていた人に『お待たせして すいません』なんて言われてもな。 でもまぁいいや。 「いえいえ。こちらこそ 迷惑をかけてすいませんでした。」 俺は軽く会釈をしその場を後にした。 こんなところで考えていても 何も始まらない。 とりあえず新菜の所へ行こう。 話はそれからだ。
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