俺の親友がこんなに可愛いはずがない!   

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ホームルームが終わった。 俺の席に新菜がやって来る。 「なんか怖そうな先生だったね。 遅刻したら廊下に立たされそう。」 「あと話長いよな。疲れた。」 「あっ。それより新菜に相談したい 事があるんだけど...。」 「いいよ。何?」 信じてもらえないと思うが 勇気を出して今日のことを 新菜に話すことにしよう。 答えよりもっと 大事なことは~♪ 俺の頭の中で40年くらい前の某アニメの オープニングテーマが流れ始める。 「実は俺ね...。今日学校に行く途中に 暑さで倒れちゃって、直ぐに起き上がった んだけど、どうもその後からおかしな事が続いてるんだ。」 「えっ!倒れたの?やっぱり 体調悪いんじゃない?」 心配してもらえるのは ありがたいけど ちょっと倒れただけだから大丈夫だって。 「まあいいや。続けてよ。」 「で、そのおかしな事って言うのは 周囲にいる人達が着物を着ていたり、 電車に乗る時に通行手形が必要だって 言われて奉行所って所に連れて行かれそうに なったりしたんだ。」 この事を新菜に話しても理解して もらえない事は分かっている。 なぜなら今、目の前にいる新菜は この世界の新菜であって 俺が元いた世界の人間ではないからだ。 この世界の新菜からすれば 俺が体験したことは普通の事で 逆に変な人だと 思われてしまうだろう。 「えっ!。通行手形持っていかなかったの? 駄目じゃん。捕まっちゃうよ。」 「その後、俺は通行手形を再発行してくれた駅員からここは江戸幕府が日本を支配している幕府国家だって言われて分かったんだけど、どうやら俺はパラレルワールドにやって来てしまったみたいなんだ。」 「パラレルワールド? よく小説に出てくるやつ?」 「そう。」 「こことは別にもう一つの世界があるの?」 「要するに俺はこの世界の人間じゃなくて 別の世界からやってきた人間なんだよ」 「つまり今の光はこの世界の光じゃなくて 別の世界にいた光ってこと?」 「そういう事になるな。俺が元いた世界は幕府なんて無くて政府っていう国民から選ばれた人達からなる機関が政治をしているんだよ。」 「武士に頭下げなくても良いの?」 そうか。この世界では武士に 頭を下げないといけないのか。 幕府だもんな。 「そうだよ。」 「いいなー...。あっ何でもない。」   「とにかく今の俺はこの世界の人間じゃないんだよ。」 「じゃあ今までの光はどこにいるの?」 なぜこの世界にも新菜が居たのか。 そして今までの『俺』は何処に行ったのか。 元々この世界にいた『俺』と 入れ替わったのだろうか。 『この現実とは別に、 もう1つの現実が存在する。』 誰の言葉かは分からないが インターネットに書いてあった言葉だ。 それだったら新菜や家族が 存在していても辻褄が合う。 簡単に説明すると A国とB国の間で戦争が起こったとする。 その戦争でB国は勝利し、A国は負けた。 しかしパラレルワールドでは A国が勝ったことになっていて B国は敗戦国になっているのだ。 そして、この世界の場合は明治時代、戦争で 近代化を求める新政府軍と幕府軍が戦い、 本来ならば新政府軍が勝ち 政権を手に入れるのだが この世界では新政府軍は反乱者として 鎮圧され、処罰された。 当然ながら引き続き幕府が政治を 行う。そのまま幕府が近代化を行い 今に至るわけだ。 今までパラレルワールドは ただの都市伝説だと思っていた。 でも今は違う。 俺は身を持って体験した。 「それは俺にも分からない。 俺が元いた世界に行ったか、 消えたかの二択だと思うけど。」 もしこの世界に元々いた『俺』が 入れ替わりで消えてしまったんだとしたら 今頃元いた世界では俺が失踪したと大騒ぎに なっているだろう。 「要するに入れ替わったって事ね。」 「今はまだなんとも言えないけどな。」 新菜が話を理解してくれたようだ。 ふと辺りを見渡すと 周囲の生徒から冷たい視線を感じた。 厨二病だと思われているのだろう。 でも俺は気にしない。 だって本当の事を話している だけなんだから。 「信じてくれる?。」 「私は光の話を信じるよ。 別の世界の光だったとしても 光である事には変わりないし。」 それもそうだ。俺である事には変わりない。 「新菜...。ありがとう。」 「うん! 」 俺は新菜の優しさに涙が出そうになった。
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