250人が本棚に入れています
本棚に追加
最後に話したのは、いつだっけ? 相変わらず『くら澤』での食事会は我が家には欠かせない行事だし、商店街を通るたびにおじさんやおばさんとは挨拶をしている。だからかな? 本当に今まで気が付かなかった。この中で、ぽっかりと俊成君が抜けている。今更ながらの事実に驚いてぼんやりと俊成君を見つめていたら、その視線に気が付いたようでふいに彼が振り返った。遠目でもはっきりと分かる、俊成君の顔。真っ直ぐに私を見つめると、ちょっと驚いたように目をしばたかせる。
「久しぶりだね、俊成君」
気が付くと私は彼に駆け寄って、話しかけていた。
「あずちゃん」
保育園から直接俊成君の家に行くと、出迎えてくれるあの笑顔。当たり前のようにそれを期待していたのに、俊成君は戸惑うようにつぶやいて、ちらりと後ろをうかがった。
「倉沢、サッカーどうすんの?」
その視線と同じタイミングで、後ろから問いかけられる。
「先、始めていて」
そう言うと俊成君はすっとベンチに向かって歩き出した。私も慌てて歩き出すけれど、なんだか予想もしていなかったこの流れについていけず混乱する。
最初のコメントを投稿しよう!