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大西はそこで言葉を切ると、周りをうかがうように素早く辺りを見回す。そして追い出された分四年生よりも先に辿り着いた二年三組の男の子たちを発見し、彼らに聞こえるように言い切った。
「仲間と離れて二人でこそこそしゃべっているような奴、サッカーなんかじゃなくてままごとで十分だろ?」
「なっ」
なにそれっ。
さすがにそれ以上の声は出なかったけれど、あまりの言い様に私の手はきつく握り締められた。大西はみんなの前で俊成君を馬鹿にすることに成功し気持ちがおさまったようで、ゆっくりと他の四年生の元に歩いていく。悔しくてその後姿をいつまでも目で追っていたら、俊成君の声がした。
「もう、行きなよ」
「え?」
その短い言葉にあわてて振り返ると、俊成君は私から背を向けて自分の膝についている砂を払い落としていた。さっきまでとは違う、まるで私を拒絶するような動作。どうしてよいか分からず立ち尽くしていると、三組の男の子たちと目が合った。
「あ……」
みんなは、今の出来事をどう思ったんだろう。
一気に怒りの熱が、冷めていった。
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