1.最初のはじまり

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「受験生だから。って、言ってもあずさには分からないか。あと十年したらあずさも俊成もこうなるんだぞ」  優しい口調。でもやっぱり私には良く分からないや。とりあえず私はお兄ちゃんの後姿に大きく手を振って、見送ることにした。 「いってらっしゃーいっ!」  カズお兄ちゃんは振り返らなかったけれど、代わりに肩越しに手を振ってくれた。  と、ここでゆっくりなんてしていられない。早くテレビ観なくちゃ。 「おじゃまします!」  焦るあまりに脱ぎ散らかした靴を慌てて揃え、私は勝手知ったる俊成君のおうちのリビングへ走りこむ。 「はい、こんにちは。あずさちゃん」 「こんにちは、おばあちゃん」  挨拶をしてテレビに視線を動かすと、今夜8時放送予定のサスペンス劇場コマーシャルが流れていた。 「始まっちゃった?」  ソファーに埋もれるようにして座っている俊成君に話しかける。 「まだ最初の歌だけ」
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