32.出発の朝

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 セックスって言葉、とても生々しいのに機能しか捉えてない感じで、自分たちの行為にそれを当てはめるのはまだ戸惑いがあった。エッチって言葉もなんだか妙に甘ったるくて違う気がするし。そう考えていたら、肌を重ねるって言葉が一番しっくり来るなって思った。なんか、時代劇とか演歌とかに出てきそうな言葉だけれど。 「今だったら、カラオケで演歌熱唱出来そうな気がするんだ、私」 「なんだよ、それ」  訳が分からないといった口調で、俊成君がつぶやいた。私はくすくすと笑って、さらにもたれかかる。つないだ指に力が込められて、きゅって握られた。やっぱり、幸せ。
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