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33.四人で会おうよ
ベンチからぼんやりとあたりの景色を見ていたら、桜の木が目に入った。まだ明けていない早朝の空気の中、ところどころに白い花が浮かんでいる。
「桜、咲いたね」
「三分咲きかな」
確かに今年一番の開花宣言は数日前に出ていたけれど、北上してここら辺にくるにはまだ日があった。これでも早い方なのかもしれない。
「せっかくなら、桜の木の下で写真取りたかったね」
唯一のツーショット写真、小学校入学式後のあの桜の写真を思い出し、つぶやいた。
「カズ兄が言っていたけど、あっちではゴールデンウィークになってもまだ桜残っているところもあるって。観に来ればいいよ」
「うん。……でも、今年はこっちに戻ってくるでしょ?」
もたれていた体を離し、思わず俊成君を見つめてしまう。例年の話をしているだけだって分かっているのに、つい不安になってしまった。そんな私の表情におされ、俊成君がまばたきをする。
「大丈夫。戻ってくる。勝久と太田にも会う約束させられたし」
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