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言いながら、俊成君の表情がなんだか苦くなっていった。多分今、俊成君の頭の中では、二日前の情景が浮かんでいるんだろう。久しぶりにというか、卒業式以降初めて美佐ちゃんと勝久君の四人で会ったんだ。そのときの事を思い出し、私は笑い出してしまった。
◇◇◇◇◇◇
「ふぅーん」
二日前、待ち合わせ場所に現れた私と俊成君を見て、そう切り出したのは美佐ちゃんだった。
「ふぅん。良かったじゃない」
あごをちょっと上げて、細めた目と、組んだ腕。だから美佐ちゃん、美人がそんな態度取ると、迫力増して怖いんだってば。
「お陰さまで」
隣でぽつりと言い返すその声に、びくりとする。俊成君、このタイミングでその台詞は、決して友好的じゃない気がするんだけれど。
ひとり焦りながら二人の顔を交互に見つめていると、こらえ切れないといった様子で吹きだす人がいた。勝久君だ。
「ほら、あずさが怯えているぞ」
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