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動こうという考えが浮かんでこない。けれど電車がやってきたのか、階段を数人の乗客が上ってきた。そのときになってようやく気付き、私は慌てて横にどく。その拍子に、ぱふっとコロの体が足に当たった。
「ごめん、コロ」
何も分からず、無邪気にコロが尻尾を振る。その無心に慕ってくる瞳に癒された。やっぱり私、新幹線まで行かなくて正解だったのかも。
横にはどいたものの、まだ立ち去りがたくて、でももう階段を見ていたくなくて、コロのふかふかとした耳をただ眺めた。
多分これから先、私たちの間には色んなことが起こるんだろう。
そんな事を考えていた。
四年の間、俊成君も私も立ち止まってはいられない。環境だけじゃない。心だって変化していく。俊成君は私に待っていて欲しいっていったけれど、俊成君だって私を確実に待つ保証はどこにも無いんだ。
でも、それでも、待っていたい。リードを持つ手に力がこもった。
俊成君がカンナの花を覚えていてくれたから。あの頃から、ううん、生まれたときから二人の関係が始まっていたんだって思えるから、だからこれからの四年間も大丈夫だって思えてくる。
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