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最近、家にこもりがちだった妹にしては珍しい。すぐ近くに住む幼馴染の俊ちゃんと、ケンカをしていた。地方の大学に行くのを教えてくれなかったらしい。本人は否定していたけれど、それだけで切羽詰った顔をして落ち込んでいた。姉としても今後の二人の行方が気になるところだった。
「気分転換でもしてもらわないと、鬱陶しいからね」
そうつぶやきながら、お新香をつまむ。
「行儀悪いわよ」
「はいはい」
お茶を注ぐついでにテーブルに移動してきた母に、たしなめられた。それを軽く流して荷物を部屋に置きにいく。戻ってくると、ご飯と味噌汁がよそられていた。
「いただきます」
小さく言って、食べ始める。つけっぱなしのテレビはちょうど歌番組の時間で、母はそれをBGM代わりに本を読んでいた。
「……で、あずさどこに行ったの?」
活発な姉に比べ、妹のあずさの方はおっとりしているというのか、若干内気な性格をしている。夜遊びもそうそうするタイプではないのに、八時をとうに超えているのに帰ってきていない。母が悠然と構えている以上、まだ奈緒子が心配するほどの時間ではないが、妹がどこに行っているのかは気になった。
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