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やっぱりおばさんに、じゃなくて俊ちゃんに、だったんじゃないの。
そう言いたい気持ちを抑えて、奈緒子は中断していた食事を再開した。その柔らかい雰囲気で、人の良さそうな印象を受ける母だが、結構な策士である事を奈緒子は感づいている。娘が一生懸命秘密にしていた出来事を、当たり前のように母が知っていたことなんてざらにあった。母親なんてみんなそんなものかとも思うのだが、特にこの母の場合、何を考えているのか娘には読めない節があり油断が出来ない。
「で、俊ちゃんいたんだ」
普段なら食事中でもテレビの音がないと寂しくなる奈緒子だったが、今日は不思議とうるさく感じられた。多分興味が母の話す妹のことに行ってしまっているからだろう。リモコンでテレビの電源を切ると、また話を振ってみる。
「そうね。うちにきたから」
「うち? うちって、ここ?」
「あずさにカボチャもたせて行かせたら、しばらくして俊ちゃんが来たの。あずさは帰ってきてますか? って。ちょっと慌てていたみたいだったけど。入れ違いになっちゃったのかしらね」
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