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「あ、うん」
「お風呂やらなくちゃね。どうせあの子も帰ってきたらすぐ入るだろうし」
お母さん、それって……。
突っ込みたいけれど、言葉に出したらおしまいだと分かっているため、無言になる。反対に父は思ったことが口に出てしまうタイプなので、こういうときは気が楽だ。
妹のことなのに妙に自分がどきどきしてしまい、それから逃れるように奈緒子は立ち上がった。
「じゃあ、片付けるよ」
「お願いね」
母の言葉を背中で聞き流し、片付けに取り掛かる。冷蔵庫の中、いかに残り物を詰め込むかが問題だ。パズルを解くように目の前の冷蔵庫に意識が集中した。
その瞬間、ぽんと母が聞いてきた。
「それで奈緒子、あんたの旅行っていつ行くって言っていたっけ?」
「え?」
一瞬、何を聞かれているか分からず動きが止まる。
「……あ、来週。来週の木曜日」
思い切りびくついてしまい、そんな自分に気が付いて奈緒子は焦った。
「あの、メンバーは大学のサークルの子達だからね。男五人の女が六人っていう、中途半端な数の」
「聞いたわよ、それ」
くすくすと笑いながら母が立ち上がる気配がした。
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