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「さ、お風呂やっちゃおうっと」
完全に母がいなくなった事を確認してから、奈緒子は思わずため息をついた。
お母様、怖すぎです。
サークルの旅行で男女合わせて十一名なのは本当だ。しかしその中に、家族にはまだ内緒の自分の彼氏が含まれている。だからどうといった話なのだが、すべて見透かされている気がして必要以上にびくついてしまう。
「まあ、いいんだけどね」
次第にこらえきれなくなってきた笑みを浮かべ、奈緒子は食器を洗い出した。
次はあずさが、母の言動に焦る番だ。
もうしばらくしたら、家族と目を合わせることも出来ずにこそこそと帰ってくるのだろう。
「頑張れ」
目前の母への対応と、これからの四年間。そのどちらにも使える励ましの言葉を、妹に向けてつぶやいた。
玄関でカチャリという音が聞こえ、コロが嬉しそうに吠える声がした。
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