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「一ヶ月検診です。病棟の看護師さんに会ったら、倉沢さんのお子さん産まれたわよって聞いて」
「もう検診? 早いわねー」
「本当。早いでしょ」
宮崎のおばさんはそう言いながら、腕に抱える赤ん坊を良幸たちにも見せてくれる。黒目の大きい、つやつやとした赤ん坊。試しにほっぺを突いたら、一瞬びっくりしたような顔をした後、嬉しそうに笑った。
「女の子は可愛いわね」
「いま機嫌が良いだけよ。一度ぐずると大変」
母親達の会話を聞き流しながら、良幸はもう一度ガラス越しの弟を眺める。やっぱり宇宙人か埴輪にしか見えない。
「ねえ、お母さん」
母のパジャマを引っ張ると、真剣な顔で訴えた。
「俺、こっちの方がいい」
そうして宮崎家の赤ん坊を指差す。一瞬の沈黙の後、家族から猛烈な突込みが入った。
「ユキ!なに言ってるのっ」
「人様の赤ん坊を羨ましがるな!」
「良幸、それは無理ってものだからね」
「お前、馬鹿か?」
そして最後に父に拳固を食らった。
「ってーっ」
これが弟俊成とだけではない、その幼馴染のあずさとの初めての出会いだった──。
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