おまけ話:二人の時間1. 倉沢家にて

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「一ヶ月検診です。病棟の看護師さんに会ったら、倉沢さんのお子さん産まれたわよって聞いて」 「もう検診? 早いわねー」 「本当。早いでしょ」  宮崎のおばさんはそう言いながら、腕に抱える赤ん坊を良幸たちにも見せてくれる。黒目の大きい、つやつやとした赤ん坊。試しにほっぺを突いたら、一瞬びっくりしたような顔をした後、嬉しそうに笑った。 「女の子は可愛いわね」 「いま機嫌が良いだけよ。一度ぐずると大変」  母親達の会話を聞き流しながら、良幸はもう一度ガラス越しの弟を眺める。やっぱり宇宙人か埴輪にしか見えない。 「ねえ、お母さん」  母のパジャマを引っ張ると、真剣な顔で訴えた。 「俺、こっちの方がいい」  そうして宮崎家の赤ん坊を指差す。一瞬の沈黙の後、家族から猛烈な突込みが入った。 「ユキ!なに言ってるのっ」 「人様の赤ん坊を羨ましがるな!」 「良幸、それは無理ってものだからね」 「お前、馬鹿か?」  そして最後に父に拳固を食らった。 「ってーっ」  これが弟俊成とだけではない、その幼馴染のあずさとの初めての出会いだった──。
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