252人が本棚に入れています
本棚に追加
しかし願いというものは、言ってみると案外あっさりと叶ってしまうもののようだ。
歩いて一分も離れていない近所で、こどもを持つ家同士。だが、倉沢家は小学生が二人で、宮崎家は二歳の乳幼児が一人。年齢が離れていたため、こども達を介しての交流というのは今まで皆無だったのが、俊成とあずさの誕生で一転した。
宮崎のおばさんは毎日のようにあずさを連れてやってきて、母や祖母とお茶をするのが習慣となった。翌年には俊成もあずさもそれぞれ別の保育園に入園したが、だからといって結びつきが無くなった訳ではない。良幸が放課後の遊びから戻ると、大抵当たり前のようにあずさは俊成と一緒にいた。最初はおばさんに連れられて、そしてよちよち歩きを始めた頃から一人で勝手に来るようになった。こうなるともはや、あずさは倉沢家にいるのが当たり前の妹と同等だ。
「あずー。お前、手に持ってんのそれ、なに?」
二人が四歳になったある日、いつものように良幸が家に帰ると、居間のソファに座っておやつを食べている二人がいた。
「チョコ」
「どうしたんだよ?」
「おばあちゃんにもらったの」
「トシのは?」
「……クッキー」
最初のコメントを投稿しよう!