252人が本棚に入れています
本棚に追加
なんだか良く分からない説明だったが、それぞれの手に持つ菓子袋で流れが読めた。独り占めしようと我がままを言った俊成に祖母が怒り、菓子袋を取り上げあずさに渡したが、あずさが同情して二つのうちの一つ、クッキーの袋を俊成に渡したらしい。
普段はおっとりとした性格の弟だったが、それでも虫の居所が悪いときもある。長男の和弘ならここでにっこり微笑んで、お菓子を均等に分けることもしただろう。だが二番目のお兄ちゃん、良幸はそこまで弟に対して優しくはなかった。
「ふぅーん。ばあちゃんに怒られて、拗ねているんだ」
にやりと笑って弟を見下ろす。
「違うもん」
「じゃあなんでクッキーくれないんだよ」
「やだ。あげない」
お菓子の袋をぎゅっと握り締め、俊成がうつむく。あずさはこのユキお兄ちゃんの意地悪にどうしてよいか分からず、困ったように二人の顔を見つめるだけだ。良幸はあずさに向き直ると、俊成に当てつけるように優しい声音で言った。
最初のコメントを投稿しよう!