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気が付くと小さな声で彼の名前を呼んでいて、彼の動きが止まった。
「なに?」
その声の色に気が付いて、そっと目を開ける。途端に私の顔をのぞきこんでいる俊成君の表情が飛び込んできた。
「もしかして、意地悪、してる?」
動きは止まっているのに俊成君が入ったままだから、私の体の中のスイッチも入りっぱなしだ。もどかしい切なさで涙目になる。俊成君はそんな私を見つめると、嬉しそうに微笑んだ。
「意地悪はしてないよ。ただ、あずの欲しがる顔が見たかっただけ」
やっぱり意地悪だ。
上目遣いに無言で睨んだら、くすくす笑いながら耳元でささやかれた。
「言ってよ。どうして欲しい? この後どうされたい?」
「やっ……」
耳に掛かるその吐息にびくついて、体が震える。嫌と首を振ったのに、私の中がうごめいた。
「欲しいところにあたっている? あず、俺に聞かせて。顔を見せて」
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