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「だからね、その言葉、帰ってきてから言って。卒業して就職して、本当にそのときになったら、言って。絶対に『はい』以外は言いたくないから」
私の言いたいことがきちんと届いたか、確かめるように黙り込んだ。俊成君の目が徐々に細められて、優しい笑顔に変わる。
「今日の俺、情けない姿しか晒していない気がする」
その言葉に笑いながら、そっと俊成君を抱きしめた。
「いいよ、晒して」
だって、そういうのひっくるめて俊成君のこと、好きなんだもの。
さすがにそこまでは言えなくて、彼の胸に顔をうずめた。いつの間にか抱きしめたはずの私の体が抱きしめられて、あやされるように揺れている。
多分、私が今言わないでいる気持ちも、俊成君なら分かってくれる。だからまた分からなくなったとき、悩んで立ち止まってしまうときまで、言わないで取っておこう。
「あず」
「ん?」
もう一回。と誘うようにキスをされ、私は素直に身をゆだねた。
これからもずっと、一緒の時間を過ごしていこう。
心の中で、俊成君に語りかけた。
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