1人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
父が亡くなったなら
その日、数年ぶりに音信不通だった母親から会いたいと言われた。
自分はもう十数年一人暮らしをしていて親は死んだものとして生活していた。
親はもういない、自分だけだ。そう思って暮らしていた。
だが、現実、母は数日後、僕の家の近くの海に呼んで一言こう言った。
「良い知らせ、悪い知らせ、どちらだと思う?」数年ぶりなのに開口一番それだった。
僕は「悪い方」と答えた。
母は頷き「父さんが死んだ」と言った。ストレートに「亡くなった」ではなく「死んだ」と言った。
僕はそれを聞いてホワンとした気持ちになり「そうかあ、父さん逝ったかぁ〜」と太陽を仰ぎ見て答えた。
そういった瞬間母は思い切り泣き出し「なんで!?なんでそんな冷静にいられるの!?なんで驚かないの?死んだのよ!?父さんが死んだのよ!?」
母は、僕がそれを聞いたら驚きすぎて暴れると思ったみたいだ。
だが事実見当違いで自分はショックは無かった。なんというか現実味が無かった。
母を泣き止ました後、二人で喫茶店へ行ってゆっくり話したり、一緒にスーパー銭湯の温泉にも行った。
母は楽しそうだった。
父は色々聞いてないところではダメなところがあったらしいが、最後の功績をした。
何年も離れていた僕と母を繋げる橋になってくれたことだ。
そして母を護れるのは僕だけだ。僕は片親になったが責任を持って母を護ろうと誓った。
最初のコメントを投稿しよう!