一日目(1)

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 小柄で、細身だ。けれども、女性らしい、服の上からでも分かる主張の強い胸の膨らみが、ゆっくりとした歩みの中で上下していた。  僕は、つい、見惚れてしまう。  女性を見つめることは、どうしても照れてしまう。僕は、目のやり場に困ってしまい、とりあえず視線をそらせた。  こういう時は、空でも見て落ち着こう。  雲はひとつもなく、どこまでも青い。まだ六月だということを忘れてしまうほどの、突き抜けた色調だ。  雨雲を従えている梅雨が、真夏の侵攻に負けたのかもしれない。梅雨の合間に訪れた快晴は、『さあ、お待ちかねの夏がくるよ!』と主張する、心地が良いものだった。  僕が居る別府公園は、大分県別府市の中心部に位置する、四百メートル四方の広大な都市公園だ。樹齢が百年を超える松、楠や桜、金木犀、椿などの四千本の樹木が植えられている。
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