四十六日目(1)

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 彩乃が、「信じてもらえないだろうけれど、知らない女の子が夢に出てきて……。ここに来れば、榊さんに会えるから、って」と、携帯電話を取り出すと、僕の方に差し出してくる。  彩乃が僕の事を、と呼ぶことはなかった。『しゅうくん』と呼んでくれることを、僕は気に入っていたのだ。  ……ずっとそう呼んで欲しいと、願うほどに。 「会えたら、これを、榊さんに見せて欲しいって」  目の不自由な人が、携帯電話を操作するところを、僕は初めて見た。  視覚や聴覚をサポートする為に、選択した内容を、機械的な音声で読み上げてくれるようだ。 「わたしも、これを聴くまでは、半信半疑だったの……」  彩乃が、動画を再生させる。携帯電話の画面の映像に、僕は思わず、双眸を見開いた。
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