342人が本棚に入れています
本棚に追加
利用? と、僕はその意味を理解できず、次の言葉が始まるのを待った。
「私は、百瀬彩乃では、ないの……。ああ、すこし違うかな。正確には、躰だけは、百瀬彩乃。
魂は、もう、この世には居ない存在」
僕は、なんの冗談だろうか、と思考が追いついていかない。
「私は、向井雪奈といいます。
しゅうくんが助けてくれた、向井雪雄の、娘です」
僕は、その名前を思い出す。雪雄から預かっていた、妻と娘の写真。その裏に書かれていた言葉は、こうだった。
『さみしくなったら言ってね、と雪奈が微笑んでくれた』
彩乃に、その名前を伝えた事は、なかったはずだ。映像の中の彩乃が、話を続ける。
「流石に、信じられないよね……。
ほら、しゅうくんに出会った日、私が言ったことを覚えている?
私は、家出少女だ、って」
最初のコメントを投稿しよう!