四十六日目(1)

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 利用? と、僕はその意味を理解できず、次の言葉が始まるのを待った。 「私は、百瀬彩乃では、ないの……。ああ、すこし違うかな。正確には、躰だけは、百瀬彩乃。  魂は、もう、この世には居ない存在」    僕は、なんの冗談だろうか、と思考が追いついていかない。 「私は、といいます。  しゅうくんが助けてくれた、向井雪雄の、娘です」  僕は、その名前を思い出す。雪雄から預かっていた、妻と娘の写真。その裏に書かれていた言葉は、こうだった。 『さみしくなったら言ってね、と雪奈が微笑んでくれた』  彩乃に、その名前を伝えた事は、なかったはずだ。映像の中の彩乃が、話を続ける。 「流石に、信じられないよね……。  ほら、しゅうくんに出会った日、私が言ったことを覚えている?  私は、家出少女だ、って」
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