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そう言い残して、映像が終わる。彩乃の笑顔が、大きく映し出されたまま、静止していた。
僕の知っている彩乃は、もう、いない。
……ほんとうに、もう、いないのか?
「どうして、もう会えないみたいに、言うんだよ」
僕は、言葉にしてしまっていた。声が震える。彩乃の言葉が、脳裏に蘇った。
『完成したら、また読ませてもらえる? 結末が気になる』
「絵本、完成したんだよ。読んでくれるって、約束したじゃないか」
……そうだ。いま、この命を終えることができたなら、すぐにでも、会えるのではないか?
そう思いついた瞬間、隣で心配そうにしていたこの彩乃が、「あの、大丈夫ですか? 泣いています?」と、訊いてくる。
その存在を忘れかけていた僕は、呼吸を整えてから、こたえた。「たった今、失恋してしまって」
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