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「あの、絵本を作られているのですよね?」
卒業制作として作った、『ナイン』という題名の絵本のことだろう。
「ああ、はい」僕は、それを知られていることに、顔が赤くなる。
「凄いですね。どのような内容ですか?」と、小首を傾げていた。
絵本の主人公である躰の弱い少年が、女神から借りた健康な躰を、約束通り返しに行く。
僕は、その内容を、掻い摘んで彩乃に説明した。
少年が、健康な躰を得たことで作り出せる未来よりも、自分自身の躰であることを選ぶ。そして、意気揚々と歩いていく。そんな物語だ。
「なるほどです。……わたしが、もしも、一時的に視力を取りもどしたとしたら。……返すと思います。あ、見える事が嬉しくない、って事ではないですよ」
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