四十六日目(1)

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「あの、絵本を作られているのですよね?」  卒業制作として作った、『ナイン』という題名の絵本のことだろう。 「ああ、はい」僕は、それを知られていることに、顔が赤くなる。 「凄いですね。どのような内容ですか?」と、小首を傾げていた。  絵本の主人公である躰の弱い少年が、女神から借りた健康な躰を、約束通り返しに行く。  僕は、その内容を、掻い摘んで彩乃に説明した。  少年が、健康な躰を得たことで作り出せる未来よりも、自分自身の躰であることを選ぶ。そして、意気揚々と歩いていく。そんな物語だ。 「なるほどです。……わたしが、もしも、一時的に視力を取りもどしたとしたら。……返すと思います。あ、見える事が嬉しくない、って事ではないですよ」
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