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彩乃の小さな手を、宝物のように、ぎゅっと握ってみる。ひとつ大きく息を吸って、僕はこたえようとする。
この子が僕の傍に居るのは、あの彩乃が、僕を守ろうとしたからかもしれない。
「……いえ。これからも、ずっと、たいせつだと思います」
すこし緊張がとけたのか、幸せそうな笑顔で、彩乃が躰を寄せてくる。
「よかった」
真夏の太陽に見られていることも忘れて、僕は彩乃を、ぎゅっと抱き寄せてしまう。
いつの間にか頬を伝っていた涙は、どことなく、温かい気がした。
(了)
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