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チュンチュン、チチチ…。
うーん、眩し…。朝が来てしまった…。
というか鳥めっちゃ鳴くじゃん。漫画みたいな鳴き方するじゃん。いつも思うけどさ。
目覚ましが鳴る数分前、俺はいつもの様に目が覚めてのっそりと布団から身体を起こした。
というより、起こそうとした、が正解かな。
がっしりと巻き付いた腕は寝ているはずなのにやけに力強くて、それを引き剥がすのも最早日課になっている。
それにしても…。
毎晩どんな寝方で眠りについても朝には必ずこの体勢になっているのはどういうことなんだろう。
背中の体温が今はまだ心地好く感じられるけれど、夏になってくると暑いだろうなぁ。
こいつもこいつで疲れないのだろうか、腕とか…。まぁいいけど。
ふっと窓の外を見ると天気は快晴、広がるのは真っ青な空。
嬉しそうに飛び回る鳥達は、やっぱりチュンチュン鳴きながらどこかへ羽ばたいていった。
晴れ、かぁ。予報通りだ。
ふと振り返って、すやすやと眠る同居人を覗き込む。朝陽に照らされるその姿は本当に童話の主人公みたいで、頬を指でなぞると長い睫毛がふるりと揺れた。
おはようって、言って欲しいなぁ。なんて思わなくもないけれど。
雨の日だけじゃなくて、こんな晴れの日も、明るい陽差しの中で声を出して笑い合えたなら。
そんなことを思ってしまうのは、いけないことなのだろうか。
頬に滑らせていた指をさらさらの黒髪に通すと、僅かに彼が身動いだ。
桜色の唇がきゅっと結ばれて、やがて緩んだかと思うと黄金の花がゆっくりと開く。
寝ぼけたままの姿で俺を見上げるこの光景は、正直何度見ても慣れない…。絵画かよ…。
「おはよ、ナズナ」
いつものように髪を撫でながらそう呟くと、彼ものっそりと起き上がった。暫くぼうっとして、またふっと微笑む。
太陽とは仲が悪いんだって言っていたけれど、本当にそうなのかな。
本当は太陽も、こいつのことが好きなんじゃないかな。
だって陽の光の下で微笑むこいつは、こんなにも美しい。
「…はよ」
「おう、朝飯作るかー!………え?」
「え」
「………」
「………」
「え、いたたたたっ!ちょっと!つねるなら自分の頬つねって!!」
俺も相応驚いているが、彼も相当驚いている。ナズナは黄色い瞳を真ん丸く開いて、喉に手を当て、口をパクパクさせていた。
俺も俺で、時計と空模様を何度も確認した。
朝。晴れ。太陽も出てる。
「ナズナ…?」
「ユウ、ガ」
「え」
「え」
………え?
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