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なんとなく、
ただなんとなく、
朝起きた時、今日死ぬかもしれないなと思った。
別になんてことないいつも通りの朝で、
テレビからは天気予報が流れている。
今日は快晴らしい。
梅雨前のまだ涼しい泡沫に、空には白い月が浮かんでいた。
死ぬにはいい日だな
別に希死念慮がずっとあった訳じゃない。
…いや、嘘かもしれない
消えたいと常々思っていた。
ただきっかけがなかっただけで。
小さな六畳のお城からずっと空を見る日が続いていた。
自分がいなくても世界は廻るなんて
ほんとは否定してほしかったのだと思う
小学生の頃、引越してからしばらくして地元を訪れても、誰も自分に興味を示さなかった
そこそこ友達は多いほうだと思っていたけど
自分の存在なんてそんなものだと思い知った
せっかくなので、死ぬ前に散歩をしようと思う。
お城に充満する障りを押し退けて、現実逃避と洒落こもう。
マンションの階段を降りて、排気ガスの新鮮な空気を飲み込んだ。
朝のこの時間はみんな忙しそうで、でも今日死ぬかもしれない自分には全く関係ないのだ。
実は死ぬかもしれないなと思ったのは、今日が始めてじゃない。
なんとなーく空を見て、あー死にそうかもとなんとなーく思う日が時々ある。
でもそれで死んだためしが無いのだから、つくづくいい加減な頭だなと思う。
自分から命を絶とうとは思わない。怖いから。
例えば包丁を持った人が暴れていて、誰かを庇ってそれで刺されたなら、それでもいい。
誰かに終わらせて欲しいなんて、他力本願もいいところだ。
今日は死ぬかもしれないけれど、別に特別なことは何もしない。
それが人生だと思っている。と自論を語ってみた。
少し遠くまで歩いてみたけれど、ほんとうになんにもないなこの辺は。
アスファルトの波は冷たくて、焦点は定まらない。
きっと今頃みんなは大きな社会の波に乗って、世界に貢献して、忙しいって言いながら、上司に怒られながら、幸せな道へと向かっていくのだろうか。
何になりたいのかもわからないし、したいこともないし、働きたくないし。
それが駄目なことも分かっていて身体はずっと焦っている。傷は増えていく。
心と身体が綱引きをして、決着はまだまだつきそうにない。
結局人は偽って他人を模して生きるしかないのだと思う。その最たる例が自分だ。
誰かになりたくて努力しては追いつけなくてもがいて、結果つけられたのは偽善者というデスマスク。
取りたくても取れなくてもうずっと自分の顔を見ていない。
元々綺麗な顔じゃないのに、今どんな顔してるんだろう。
…全く自分は思考が途切れない人間だな。
1人頭の中でべらべらとよく喋れるもんだ。
適当に歩いていた足は、いつの間にか駅に着いていた。
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