「僕は君に伝えたいことがあった」

1/1
前へ
/1ページ
次へ

「僕は君に伝えたいことがあった」

 今日、地球が終わる。地球に寿命が来たみたいだ。周りを見渡してみても、誰もいない。もう人類という存在は、僕しかいなかった。  ふいに、随分と昔に言われたことを思い出した。  「そっか。それじゃあ、地球が終わる最期の日、君は一人だね」  確かに、君はそう言った。そう言われた。そして、それは現実となった。  「君の言った通りになったね」  地球が終わるというのに、昔の思い出に耽るなんて、呑気なものだ。  僕は不老不死だ。今まで死ぬようなことはなかったけれど、さすがに地球が終わるとなれば、僕も死ぬだろう。  地球と、僕の、最期の日。もうこの世にはいない君に、想いを告げて、そして宇宙の塵となろう。  君に伝えたいことがあったのに、何年、何十年、何百年も経ってしまった。  「直接、言えなくてごめん」  地球が終わる日になって、今更、「君が好きだ」なんて、100年後なんて来ないけど、「100年後も愛してる」なんて、言えないけど、君のことを忘れたことも、君への想いや気持ちが、色褪せたことはないし、偽ったこともないから。だから、地球や僕が消えても、この想いだけは消えずに、君に届いてほしい。  「こんな弱虫でごめん」  君が酷い人なら、泣いてなかったら、こんな弱虫な僕に優しくなんてなかったら。君のこと忘れられたかな。嫌いになれたかな。こんな苦しい想いなんて、しなくてすんだかな。でも、どんな君も、どの感情や想いも、全部が全部愛おしい。  君が好きだって、愛してるって、手遅れで今更だけど、今なら言える。  「こんな弱虫で、情けなくて、臆病な僕だけど、君のことがずっと好きでした。だからこれからも、君のことをずっと好きでいていいですか」  返事なんて返ってくるはずもなく、ただただ地球が終わる時間が迫ってくる。  僕が最期に目にしたものは、いつか見た夕焼けと君だった。
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加