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布地の手触り、布団の重み、時折わずかに軋む骨。
熱っぽい手足はすこしでも冷えた隙間を求めて、布団内部を次々に侵略する。
ゴソッ
ずっ、
みし
五感が眠りを妨げるこんな夜は、時間が特別永く感じられる。
がさごそと布団の中を泳ぐ自らの身体も、無機質な秒針の行進音も、動物的な脈動も、汗ばむ手足も、石鹸の香りも…およそ知覚できる感覚の全てがチクチクとまとわりついて、気持ちをザワつかせる。
まるでいつか見たガリヴァー旅行記の一幕。小さな蛮族の手によって地面に括り付けられる大男にでもなったような心地がする。
掛け布団の空と敷布団の大地。その隙間の暗がりに群れる大勢の小人たちを想像してみる。
彼らは横たわる僕の身体めがけて髪の毛程の太さの槍を一生懸命投げつけるが、そんなものは彼らと比べて遥かに巨大な僕にとっては何でもない。
しばらくはされるがままに、ちいさな戦士達の奮闘を微笑ましく観戦していたが、それも飽きてだんだんとうっとうしく感じてきた。
そんなとき、右の脛に痒みを感じてそちらを視ると、小人族最強の戦士的なやつが雄叫びを挙げている。
どうやら初めて彼らの貧層な槍が僕の皮膚に刺さったようだった。
それを見ていた他の小人達も、奴に続けとばかりに勢い付く。
『うおおおおお!』
「調子に乗んな。」
ごろり。
僕の無慈悲な寝返りで、小人達は一人残らず一掃された。
哀れちいさな戦士たちの勇敢で無為な姿に想いを馳せる。胸の片隅に一抹の罪悪感が沸き立つ。が、自分は小人達にとっての自然災害なのだと思うことで、それも霧散した。
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