よるの余白

小人達とそれを押し潰した僕との間には、一体どのくらいの隔たりがあったのだろう？
極小と極大が銘々にメビウスの輪を成すのなら、いずれは僕という単位もあの小人達と同じように、なにか途方もなく大きなものの気まぐれな身動ぎ(みじろぎ)で鏖殺(おうさつ)される日が来るのだろうか？
もしそうであるのなら、果たして僕はあの勇敢な小人達の様に最期まで立ち向かうことが出来るのだろうか？

僕は脛毛(すねげ)の森の奥深くで、槍を突き立てる小人族最強っぽい戦士の雄々しい横顔を幻視する。その横顔はどことなく＊＊＊＊に似

ジリリリリリリリ

けたたましく鳴る目覚まし時計の音に、ハッと目が覚めた。
どうやら思っていたよりもすんなり入眠することが出来たようだ。寝覚めも悪くない。
ゆっくりと上体を起こしてから指を組み、欠伸(あくび)に合わせて伸びをする。

コキッ

ぱき、

関節が鳴る音とともに、真新しい酸素が体内に充填されるような心地よさが脳を突き抜ける。
ゆっくりと起き上がって閉められたカーテンをさっと引くと、外はあいにくの空模様だった。

「どうりで古傷が疼くはずだ。」

右足の脛をさすりながら、僕は独りごちる。