6人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
付き合ってきた4年間、空と景は時を惜しむように会話を重ねてきた。
お互いの好きな事、興味のある事、悩み事、楽しかった事、昨日の出来事……4年間絶えず重ねた会話はやがて互いの理解に繋がり、絆を深めた。
拓哉の時のような恋に恋していた頃とは違い、空と確り向き合い、徐々に愛を育ててきた。
母と同等に理解してくれている揺るぎない、確信のような力強い愛が其処にはあった。
景は空を見た。
拓哉は
「はいはい!そこ2人見詰め合わない!俺は景のお母さんと避難場所へ行くから、2人は後は勝手にしてくれ!」
と言い、道代を引っ張り行ってしまった。
暗闇に懐中電灯の灯りだけの中、空は
「怖いなら俺たちも行こうか?」
と言ったが
「ううん、もう少し空と2人でいたい。空が居たら怖くないから」
と景はベランダから外を見た。
月が遠くに小さめに輝いていた。
暗がりの中の宝石にも似て、また静かな光……まるで母のようにも見えた。
後ろから空が景を抱擁した。
「景、明日の結婚式は多分出来ない。ごめんな?」
「なんで空が謝るの?何も悪くないのに」
ずっとジューンブライドに憧れていた景が辛いのは、よく空は分かっている。
景の気持ちが、景の思う以上に空には伝わっていた。
「景、ヘラの祝福を受けられないから、幸せになれないと思う?」
そう空は言って景の全体を、左右にゆっくり回しながら続ける。
「ヘラより俺の方が景を愛してる。ヘラの祝福で得られる以上に、景を幸せにする。信じてくれるか?」
景は後ろから回されている空の手を握り
「うん、信じるよ」
と微笑んだ。
「神様より俺の方が景を愛してる」
そう空は言って景を両手で振り向かせ、キスをした。
【空を信じて、空の為に生きていこう。
空が私を幸せにするなら、それ以上に私は空を幸せにする】
景はキスの間誓った。
月は静かに優しくそれを見ていた。
了
最初のコメントを投稿しよう!