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祭りの開催を知らせる音楽が鳴り響く。
青年の隣で、打ち上げられる花火を見ていた。
青年は何かに気づき、クルスに言う。
「剣はあそこの荷物置き場に置いておきなよ。盗まれないように、ちゃんと魔法がかけられてあるから安心だよ。」
「はぁ、はい。」
人混みをかき分け、青年が指さした荷物置き場に向かう。
無事に辿り着いたクルスは剣を置き、青年の元へ戻る。
来た道を戻っていると、青年が一緒にいた男とと話しているのが見えた。
クルスが戻ってくると、男は去っていった。
クルスは疑問に思い、問いかける。
「あの方はご友人ですか?もしかして、あの人と祭りに出る気だったんじゃ…」
「ああ、彼は僕の部下だよ。別に祭りに出る気はなかったから。」
「部下?」
年上の部下がいることから、青年は結構偉い人らしい。
青年が目を輝かせた。
「おっ、第一戦が始まった!僕達は16戦目のBグループだから、まだ結構あるね。」
「16戦目…」
壇上代で、4人の男が殴り合いをしている。
それを見ている観客が、歓声を上げる。
青年も同様とても楽しそうに見ている。
フードを深く被り、近くの空いているベンチに座る。
いつもの癖で、腰に手を当てる。
「あっ、剣は預けているんだった。」
正面を見るも、多くの観客で祭りの様子は全く見えなかった。
観客が一斉に拍手をする。
決着が着いたようだ。
2回戦が始まると、その場を離れる人が多くなった。
あれだけ賑わっていたのに、人が引いていくのを見ていると、隣に青年が座る。
「さっき勝ったチームは、昨年の優勝チームなんだ。4連覇してる最強チームだよ。」
そう言うと、青年は飲み物を差し出してきた。
「この町の特産の果物を使ったシェイクだよ。」
「ありがとうございます…」
クルスが受け取り、恐る恐る飲む。
「…美味しい。」
「だろ?新鮮なもの使ってるからな〜。」
嬉しそうにする青年。
クルスはふと言葉に出した。
「この町に詳しいのですね。」
青年が返す。
「ああ、元々王都にいるからな。」
「王都?では騎士団の方ですか?」
「んー、秘密かな。君はここの出身じゃないの?旅の人?」
「えっと…」
戸惑っていると、隣からズズズという音が聞こえた。
「あれ、なくなったな。ゴミ捨ててくるから待ってて。」
青年はそう言うと立ち上がり、走っていった。
クルスは、ちびちび飲んでいた。
今日はとても日が照っていた。
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