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青年が戻ってくるのと同時に、少女の高い声が聞こえた。
「16戦Bグループのクルスさんとダリアさーん。こちらに来てくださーい!」
「お、呼ばれたな。行くかクルス!」
「…はい。」
ダリアと呼ばれた青年がクルスの手を引く。
クルスが青年の名をつぶやく。
「…ダリア。」
少女の元へ着いた二人は、少女から説明を受ける。
そのほとんどが、説明書に書いてあったものだった。
「いいですか?試合終了の合図が出たら、必ずやめてくださいよ。殺し合いではありませんので!」
少女は念を押してそう言うと、笑顔に表情を変える。
「では、お祭りをお楽しみください!」
試合説明のアナウンスがなる。
会場に上がると、厳つい男が2人たっていた。
「細い兄ちゃんが相手か!」
「怪我しても知らねぇぜー!」
威張ってそう言う男を前にしても、ダリアは笑っている。
「クルス、僕達なら勝てるさ!」
「は、はぁ…」
ダリアの勢いに押されたまま、試合開始のゴングが鳴らされた。
男が勢いよく殴りかかってくるのを、クルスとダリアは軽やかに避ける。
クルスはダリアと目が会い、同時に場外へ押し出す。
クルスとダリアはとても息があっていた。
その一瞬で勝敗が決まった。
観客が一気に静まる。
クルスが戸惑っていると、一気に割れんばかりの拍手が会場を包んだ。
「えっ、なっなに?」
「さっき倒したチームが、昨年の準優勝チーム。さすがクルス、ナイスプレーだったよ!」
ダリアがガッツポーズをする。
受付の少女が、会場をおりるようジェスチャーをする。
慌てて降りると、多くの観客に囲まれていた。
「あんたらすごいね〜!!」
「ここのもんじゃないんだろ?一体どこから来たんだい?」
受付の少女が声を張る。
「ここにたまらないでくださーい!ほかの観客の方のご迷惑になりますのでー!」
人混みを抜けると、人気の無い路地裏に駆け込む。
息を整え隣を見ると、ダリアが楽しそうに笑っていた。
「こんなに楽しいのは久しぶりだ!!次の試合も頑張ろうな!!」
「はっ、はいぃ…」
クルスは勢いに負け、気のない返事をする。
2・3試合目もすぐに来た。
クルスとダリアは次々に勝利を収めた。
相手の死角をダリアが取り、クルスがそれをフォローするという戦略が続いた。
それを見ていた観客は大いに盛り上がった。
観客は口々に言う。
「一体何者なんだ」と。
決勝の舞台は、どの試合よりも人が集まっていた。
そんな中、名前を呼ばれる。
人の多さに驚いていると、ダリアがクルスの背中を押す。
「さぁ決勝だ!!頑張ろう!!」
クルスは会場に足を踏み入れた。
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