プロローグ

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「悪の国」王都の長い廊下を、黒の剣を腰に着けた18歳程の青年が無言で歩いていた。 青年の名は「クルス・ディザイア」 クルスは立ち止まり、大きな柱を見つめる。 「そこにいるんだろ?出て来い。」 クルスが柱の後ろにいるであろう誰かに声をかける。 すると、ため息を漏らしながら、同じくらいの歳の青年がニヤつきながら出てくる。 「あーあ。折角びっくりさせてやろうと思ったのに〜。勘のいいやつは嫌いだぜ。」 「何の用だウティ。まさか、城に忍び込んだのか?」 ウティと呼ばれた青年が指を鳴らす。 「ご名答!…と、言いたいところだが、俺も王に呼ばれてな。」 ウティはクルスの隣に並び、王の元へ歩く。 「一体なんの用だろうな?もしかして、お前なんかやらかしたのか?」 「それはこっちのセリフだ。とばっちりはごめんだからな。」 「へぇへぇ。」 しばらく歩いていくと、見張り兵が2人立つ大きな門の前へ辿り着いた。 クルスとウティは、首にかけていた鍵を見せる。 兵はその鍵を確認すると、門を開ける。 中に入ると、大きな玉座に座る王の姿があった。 膝をつき、クルスとウティが口を開く。 「「我が王よ。」」 王が顔を上げる。 「クルスとウティよ。来たか。」 王が姿勢を正す。 「貴様らに新たな任務を設ける。」 自然と空気が重くなる。 「クルスには善の国への偵察。ウティはクルスの報告をまとめる監察局局長に命ずる。」 その言葉はクルスにとって、ウティにとって、あまりに重すぎる命令だった。 すかさずウティが反論する。 「お待ちください我が王よ!クルスはまだ齢18になったばかり、他に戦力になる騎士にした方が…」 「ウティよ。儂の意見に反論すると?」 部屋一面に激風が吹く。 クルスがウティを止める。 「俺は大丈夫だ。我が王よ。その命、お受け致します。」 ウティが俯く。
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