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ぶさいく
部屋の整理をしていた。引っ越しをするためだ。次の部屋は今よりも二部屋多い。でも、ものが増えるだろうから、今のうちに整理するにこしたことはない。
私は本棚の奥に分厚くて装丁のしっかりした図鑑のような本を見つけた。
「懐かしい。高校の卒アルかぁ」
片付けが最も進まない沼に片足を突っ込んでいることを自覚しつつも、ページを捲る手は止まらなかった。ページを捲るたびに時が巻き戻る。
「いたいた」
同じ学年で一番かっこよかった男子に目が留まる。今見てもやっぱりかっこいい。ググってみればSNSで見つけられるかもしれない。でもどうしよう。結婚して、子供もいたらちょっとショックかも。
私はページをさらに捲る。
「あったあった」
私たちのいたクラスのページだ。
私は写真写りの悪い自分の顔を見ないようにしてクラスメイトたちの写真を見る。写真を見ているとVR映像みたいに当時のことを思い浮かべることができる。
「ふふふ」
同じ学年で一番ぶさいくだった男子に目が留まる。今見てもやっぱりぶさいくだ。鼻が長いんだよねぇ。私はどうして・・・・・・
「おい。あんまり動くなって」
責めるような男の声が頭上から降ってきた。私の愛しい旦那さまだ。
「ごめんごめん。軽く整理してただけだから。それにこんなもの出てきたよ?」
私は卒アルを見せる。
「卒アルかぁ」
旦那さまは私のすぐとなり座って、卒アルに目を落とす。
「うわぁ、俺やっぱり昔もぶさいくだなぁ。鼻が悪いよなぁ」
「ふふふ」
「笑うところじゃないから!」
「ははは」
旦那さまは私のお腹に顔を埋める。
「俺には絶対に似てほしくないなぁ」
私は目を細めながら彼の頭を撫た。決め手は鼻なのかなぁ?
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