仮面の下のモリー

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 殺されて安堵されるって、どれほどあくどい少女だったんだと思ったものである。いじめダメ絶対!という映像を見た後に去年のいじめの主犯が殺されるなんて、正直出来すぎているような気がしなくもないが。  要するに、こんな言い方をしてはなんだが、羽丘麻友という少女には殺されるだけの理由があった、とも言えなくはないのである。殆どペナルティらしいものがなかったからこそ、六年生でも普通に進級して授業に出てきていたわけなのだから。 「うーんうーん。それならそれで、羽丘さんをどうやって真っ暗闇の中で殺したの?ってなるんだけど」  首を捻るスミレちゃん。 「ほら、モスキート音?そういうのを相手の携帯から出させて、それを目印に真っ暗闇で相手を刺し殺しました!とかそういうトリックあったじゃん?あれかな?」 「ないない、それはない」 「えー何でよ」 「あれってさ、年齢ごとに聞こえる音が違うってやつじゃん?でもって、年齢が若いほど聞こえる音が増えるってやつでしょ。つまり、先生だけに聞こえる音、なんてもんはないわけ。で、犯人がクラスの子の誰かだったとしたら、犯人は十一歳か十二歳じゃん?犯人に聞こえる音が、私達に聞こえないわけないじゃん」 「あ、それもそうか」  そう。そのトリックは、どうあがいても使えない。そんな異様な音が彼女の方から聞こえていたら、いくら離れていても私もスミレちゃんも気づかないなんてことはないだろう。教室はそこそこざわついていたから、犯人に聞こえるような音なら相当大きな音を出さなければ意味がないはずだというのに、だ。  つまり。羽丘麻友が本当に標的として狙った通り殺されたのだとしたら。あの真っ暗闇の中、犯人はなんらかの方法で彼女の場所まで辿りつき、首を刺して殺害したということになるのである。視界が聴かない真っ暗闇、音も頼りにならない、そんな状況でどうやったというのか。発光するテープのようなものが地面や机に貼られていたわけでもないというのに。 「クラス変わったばっかりだから、羽丘さんのこと知らない子ばっかりだったはずなのにね」  私は鞄の中から、貰ったばかりの席順表を取りだして机に広げた。 「前に羽丘さんと同じクラスだったのは……相澤(あいざわ)さんに太田くん。でも、二人とも羽丘さんからかなり席遠いなあ。恨みがあったところで、厳しそう」
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