6人が本棚に入れています
本棚に追加
***
様々考えて俺が出した結論は――とにかく、妹の体を見ないように全力を尽くすべし、ということだった。揺れるおっぱいの感触はもうダイレクトに胸に伝わってくるが、それは諦めるとしても視覚はやばい。リアルに裸のおっぱい見て理性を保てる自信がない。
俺は洗面所と風呂場の電気を消して、真っ暗闇の中風呂に入る決断をした。洗う感触だけでドキドキしてたまらないが、それでも視界に入るよりはマシである。
――く、くそ、シャンプーどこだ……。
いくら慣れ親しんだ自宅のふろとはいえ、真っ暗闇の中洗うのはなかなかしんどい。
――や、やべ、手が滑っ……ひゃああ!しゃ、シャンプーが、変なとこにっ……!つかお前の体こんなに敏感だったのか妹!?そ、それとも俺が中に入ってて余計なことばっかり考えるせい!?
リンスやらシャンプーやらが、胸やら臍やら股間やらに垂れるたびに、あらぬ声を上げそうになる始末。真っ暗闇で見えないせいで、触覚が研ぎ澄まされてしまっているらしい。
悲鳴を上げるのを全力でこらえなければいけなかった。というのも、今自分は妹の体なので、上がる悲鳴も妹の可愛らしい声になってしまうのである。妹の喘ぎ声っぽいのを聴いてしまったら、ほんともう、いろいろ終わるような気がしてならない。
結局、いつもなら十五分程度で終わる風呂に、四十分くらいもかかってしまった。これでも相当頑張った方だ。風呂から出て真っ暗な洗面所に出、体をどうにか拭いて着替え終わった時――洗面所の外から声がした。
「ただいまー」
どうやら、お外に遊びに行っていた妹が帰ってきたらしい。どさどさと荷物を置く音、それからトイレにドアが開く音。洗面所はトイレの隣にある。がちゃがちゃとベルトを外す音まで聞こえるのがちょっと生々しい。
――なんであいつあんな元気なんだよ。俺はもう無理だ、とにかく一刻も早く戻って貰わねーと……!
トイレから出てきたらいろいろ言ってやろう。そう思って俺が明かりをつけた洗面所から出ようとした時。
耳が拾ったのは、何かをこするような音。
それと、どこか荒い息――聞きなれた俺の、呻くような声。
こ、これはもしや。
「……ふう!」
俺が固まっていると。トイレから出てきた妹と出くわした。俺の姿で、めっちゃすっきりした顔をしている妹は一言。
「あ、お兄ちゃんただいま!オトコの体って面白いねー超すっきり!」
「ぶっ飛ばすぞテメェ!?」
ちらりと見えた廊下には。紙袋に入った大量の彼女の趣味のBL同人誌らしき山が。
――ひ、人が暗闇の中で、必死こいて配慮してたってのにこいつはぁぁぁぁ!
なお。
俺が彼女に交渉し、元の体にやっとこさ戻れたのは――なんとこれから一週間も後になってからのことである。
最初のコメントを投稿しよう!