第13章 何気無い幸せ

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第13章 何気無い幸せ

もう一度布団に入った。 健くんは私の横に布団を敷いて寝てた。 私は自分の布団を出た。 そして健くんの布団に入った。 「どうしたの?」 寝起きの声で健くんが聞く。 「ごめん。何もない。でも今日はこうさせて。」 私はそう言って、健くんの手を握った。 逆の方を向いて寝ようとした。 手が温かい。 私の手より大きい。 男の子だから当たり前か。 ずっと手を離したくない。 そんなことを思ってたらいつの間にか眠りについていた。 チュン。チュン。 雀の目覚ましで起きた。 健くんはまだ寝てる。 味噌汁の匂いがする。 「おはよう。」 おばあちゃんがそう言いながら朝ごはんの支度をしている。 「私も手伝う。」 「大丈夫よ。散歩でも行っといで。まだ涼しいから。お腹空かせてきなさい。」 「分かった。ありがとう。」 私は靴をはいて外に出た。 まだ蝉も鳴いていない時間だ。 昼間とかと打って変わって涼しい。 ラジオ体操をしている人たちが居た。 小学校の時に夏休みに行ってハンコ貰ってくるのがあったな。 朝起きるの辛かったな。 何となくラジオ体操に参加してみる。 意外と身体が覚えてるもんだな。 ラジオ体操が終わった。 ちょっと喉が乾いたから自販機でお茶を買う。 お茶を飲みながら歩く。 日曜日の朝なので街の動きはゆっくりだ。 蝉がそろそろ鳴き始めた。 夏の朝が始まった。 そろそろ健くんとおばあちゃんの家に帰ろう。 昨日殴られた所が痛む。 暴力は嫌いだ。 ある程度の暴力を容認しようとか言ってる人もいるけど私は無理だ。 喧嘩はしてもいい。 だけど、手を出すのは違う気がする。 私はこれからもその考えは変わらないだろう。 「ただいま!」 ドアを開けた。 「おかえり。お腹は空いてきたかい?」 「うん。ラジオ体操もしてきたの!」 「そうかい。ご飯出来てるからね。」 おばあちゃんは私の目をじっと見て優しい声で言ってきた。 「美希ちゃん。何があっても私は味方だから。」 「ありがとう。おばあちゃん。」 私のおばあちゃんはお母さんとお父さんが結婚する時に色々あったらしくその後絶縁状態らしい。 私はおばあちゃんとかが居るような状態を経験していない。 私は初めておばあちゃんが出来たような気がしてちょと嬉しくなった。 「健はまだ寝てるのかい。美希ちゃん起こしてきてもらっていいかい?」 「うん。朝弱いんだね。」 健くんが寝てる部屋のドアを開ける。 ヨダレを垂らしながらスヤスヤと寝てる。 かわいいというよりは愛おしいって感じだ。 「健くん。起きて。ご飯だよ!」 なんか新婚のお嫁さんのような起こし方だなって思って少し照れた。 多分この先、もし付き合って、結婚したらこういったことをするのかなって思ったら更に照れて熱くなった。 「まだ眠い…」 寝ぼけた顔と声で健くんが言う。 「ご飯冷めちゃうから。早く起きないと。」 そう言って健くんの身体をゆすった。 「おはようー。」 「よく起きれました。おはようー。ご飯食べるよ。」 「美希ちゃん朝強いね。」 「健くんが弱いだけ。」 そして私たちは食卓に着いた。 「いただきますー!」 おばあちゃんと3人でご飯を食べ始めた。 久しぶりの人と食べる朝ごはん。 美味しかった。 朝から幸せだ。 「ご馳走さま!」 ご飯を食べ終わった。 お代わりもした。 食器を台所に持っていく。 食器を洗う。 洗い終わって一息ついてお茶を飲んだ。 おばあちゃんは週に1回お茶の稽古に行ってるらしくご飯を食べたら家を出た。 最近お母さんのお墓参り行ってないや。 行かないといけない。 「健くん。私今日お母さんのお墓参り行かないといけないから、そろそろ帰るね。」 「俺も一緒に行って良い?」 「うん。お母さんにも改めてちゃんと紹介しないといけないからね。助けてくれた大事な人って。」
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