第15章 健の想い

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第15章 健の想い

僕と美希は星を見ていた。 高校生の時ぶりに、星を見に行った日。 満天の星空。 シリウス、リゲル、ベテルギウスが結ばれて出来た冬の大三角形が見えている。 その横から流れ星が姿を現した。 美希は興奮して 「ね!見た?流れ星!お願い事をしなくちゃ。」 そんなことを言ってる間に流れ星は何処かに消えた。 「あー。どっかいっちゃった。」 「僕に話しかけるからだよ。」 「ぅー。一緒に見たかったの。」 そう言って美希は少しいじけた。 プクッーって頬を膨らましてる。 頬が赤くなってるのが可愛い。 「ごめんごめん。一緒に見てるよ。」 「うん。」 そういって手を握った。 冬の夜はやはり寒い。 息が白い。 でも空気が澄んでいる。 風が吹く。 街の街灯の灯り。 家の灯り。 それを山の上から見てる。 どこかドラマの主人公とヒロインみたいな関係だなと思って少し笑った。 「何笑ってるのー?」 美希が覗き込むように僕の顔を見てきた。 色が白くて、目が大きい。 その見てきた顔がとても愛おしくて、触れたくなった。 抱きしめたくなった。 次の瞬間流れ星が流れた。 美希の肩を叩き、星空を指さす。 「あー。流れ星!」 美希はまるで誕生日にプレゼントを貰った子供のようにはしゃいでた。 「健!私今度はお願い事したよー!」 「良かったな。」 「うん!健は何をお願いしたの?私と一緒に居たいとか?」 「えー言わないよ。言ったら効果が無くなるらしいよ。」 「ほんと?じゃ言わない。秘密にしとくね。」 「僕も秘密にしとく。」 言ったら効果が無くなるなんて事はない。 咄嗟についた嘘だ。 でも、2人の願いは多分一緒だから。 言わなくても繋がってるから。 今手をギュッと握って繋がってるから。 あの時から僕はずっと一緒に居たいと思ったから。 美希と会って色々な事があった。 お墓参りに行ったあの時に僕は思った。 この人は手離したらダメな人だと。 美希ちゃんの両親のお墓参りについて行った。 僕が何が出来る訳でもないけど。 高校生の無力さをひしひしと感じていた。 昨日だって警察を呼ばないと助けることが出来なかった。 あのまま気付かずに帰ってたら多分美希ちゃんは昨日以上に酷いことをやられただろう。 たまたま気付けて良かった。 美希ちゃんの両親のお墓の前に立った。 線香を焚いて手を合わせた。 美希ちゃんをどうかいつまでも見守っていてください。 心地よい風が吹いた。 もしかしたら答えてくれたのかも。 美希ちゃんはお墓の前でお父さんとお母さんと話をしている。 僕はそれを後ろから見てる。 多分色々なものを背負ってきたんだろうなという彼女人生が背中に現れていた。 たった17歳なのに。 僕も両親は居ないけど、ばあちゃんが居るしそれなりに味方も居た。 でも、美希ちゃんはそういう人たちさえも居ない。 僕が味方になれるのかな? 偽善? 多分僕の、自分の中にある何かを埋める為に味方でいようとするのかな? そうやって自問自答した。 まるで、十字路の真ん中に立っていて自分で歩き出す。 そんな感じ。 けど。 美希ちゃんが僕を必要としてくれるなら、僕はずっと傍に居るだろう。 僕は美希ちゃんを高校入学した時から実は知ってた。 ほかの人たちとは違う雰囲気を出してたから。 気になってはいた。 そんな事をふと思い出した。 だから初めて廊下で喋った時は、緊張で声が震えた。 「ごめん。待たせたね。いっぱいお話しちゃった。」 「良いよ。あのさ…」 「うん?なーに?」 「なんでもない!」 「分かったー。」 「帰ろうか。」 「帰ろ!」 そういって僕たちはお墓を後にした。 本当はずっと傍に居るって言いたかった。 照れて言えなかった。 顔が赤くなるのが分かった。 夏の暑さのせいにしよう。 また風が吹いた。 何気なくお墓の方を振り向いた。 誰も居ないけど何かを感じた。 優しくて、暖かい感じ。 雲ひとつ無い青空と、太陽が見守ってくれてるような気がした。 僕は手を繋ごうとした。 美希ちゃんはちょと驚いて、照れくさそうに握り返してきた。 2人一緒だとなんでも出来そうな気がした。 夏の昼間にそう思った。
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