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第16章 結局私は弱い
日差しが時間が経つにつれて強くなる。
外出る時に塗った日焼け止めが効かないんじゃないかな?ってぐらいに夏の陽射しを受けている。
お墓参りが終わって私は色々考えた。
私はこれからどうしたらいいのか?
健くんの前では強い自分でいれた。
でも、それは多分強くなくて、儚くて弱い。
風が吹いたらすぐ壊れてしまう家のように脆弱だ。
これから1人で生きていかないといけない。
全部自分で決めないといけない。
中学生の時は自分1人で生きていけるとか考えてた。
自分の力でなんでも切り拓けると思ってた。
1人でなんでもできる気がしてた。
でもそれはただの虚像だった。
妄想だった。
こうやって悩みながら大人になるって他の人や、大人は言うだろう。
確かにそうだと思う。
でも、そんな人たちには頼れる人が居る。
肉親が居る。
家に帰ったら誰かが居る。
でも、私には血が繋がってる1番頼れる人が居ない。
家に帰っても誰も居ない。
私はなんだか今は1人になりたくなった。
健くんの前で弱い自分を見せたくなかった。
また、心配掛けるのが目に見えたから。
人の目を気にせず思いっきり泣けたら楽だな。
今、泣きたい。
「今日はありがとう。ちょっと疲れちゃった。帰って横になるね。」
「大丈夫?送って行こうか?」
「大丈夫。1人で。」
「そっか。じゃまた明日。」
「また明日。」
私最低だ。
今まで散々優しくしてもらったのに。
健くんの優しさがちょっとしんどいと思ってる自分が居る。
自分でも分からない。
なんの感情かも分からない。
どんどん、その感情が大きくなって私を包む。
感情が右往左往して自分でも嫌になる。
「情緒不安定じゃん…」
私は自分にそう呟いた。
しんどくなって私は近くのベンチに座った。
蝉が鳴いてる。
子どもたちが遊んでる。
街の音がする。
車の音がする。
誰かの喋る声がする。
でも、その事に何も感じなくなって、全て無音に感じた。
気が付いたらもう夕方になっていた。
ベンチに座ってからもうそんな時間になっていた。
夏の日差しがなくなって夕陽が私を照らす。
チャイムがなる。
5時のチャイムだ。
小学生たちが足早に帰る。
きっと帰ったら家族が居て、温かいご飯があって、今日あった事とか夏休みの計画を話すんだろう。
私は誰に話せばいいの?
温かいご飯は何処に行けば食べれますか?
あー。
私は頭をかいた。
気が狂いそうになり叫びたかった。
お墓参りの時と感情が違いすぎて自分でもイライラした。
あんなにカッコイイ事言ったのに。
お母さんとお父さんに約束したのに。
結局私はそんなに強くない。
私が並べた理想。
今突き付けられている現実。
その乖離が激しくてどうしたらいいか分からない。
自分で自分を鬱陶しいと思った。
とてもめんどくさい奴だと思った。
1人になればなるほど不安な感情が押し寄せてくる。
気が付いたら夕陽は完全に落ちていて夜になっていた。
公園には私以外誰も居なかった。
夏の静寂が公園を包む。
「帰ろ。」
私は公園を後にした。
とりあえずご飯を買う。
スーパーに入って弁当を手に取った。
スーパーを出た。
家に帰る途中で路上でギターケースを開いて、弾き語りしてる男性がいた。
お世辞にも綺麗とは言えない格好で一生懸命声を枯らしながら、ギターを弾いていた。
私は素通りしようとしたが何となく気になって歌を聞いていた。
お客さんは私1人。
「生きる。生きてるって事は最高さ。今日の辛いこと、明日の辛いこと。いっぱいあるけど、生きてるだけで良い。死にたかったら死ねば良いけど、せめて飯食って死ね!」
私は少し笑った。
めっちゃくちゃな歌詞じゃん。
最後死ねって言うし。
だけどなんか分からないけど涙が出てきた。
私が声を出して泣いたので、歌ってた男性が声を掛けてきた。
「お姉さん。大丈夫?具合悪い?歌五月蝿かったでしょ?」
「ごめんなさい。違う。歌詞もめっちゃくちゃだけどなんか分からないけど涙が出てきたの。」
「そう言ってくれたのお姉さんが初めてだ。」
「少ないけど。これ。」
私は100円を渡した。
「え。ありがとう。初めてお金貰ったよ!」
「私は歌とか分からないけど、あなたの歌はなんか好き。」
私はそう言ってその場を去った。
ガチャ。
鍵を挿して玄関を開ける。
真っ暗。
誰も居ない。
パチッ。
電気をつける。
電子レンジで弁当を温める。
弁当を食べる。
1口食べてもう要らないってなった。
だけどさっきの歌。
「死ぬなら、飯食って死ね!」
その言葉が頭に流れてきた。
私は無理やり弁当をお茶で流し込んだ。
お風呂。
浴槽を洗ってお湯を溜める。
お風呂が沸いた。
お風呂の小窓を少し開ける。
夏の風が吹いてて気持ちいい。
またさっきの歌が頭に浮かぶ。
つい口ずさんでいる自分がいた。
湯船に浸かった。
何も考えずに湯気が上っていくのを見ていた。
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